Amazon AWSとは?世界中のサービスを支えるクラウドの基盤
「AWS(Amazon Web Services)」は、Amazonが提供する世界最大規模のクラウドサービスです。
Webサイトの運営やアプリ配信、企業のデータ管理などを支える“インターネットの裏方”とも言える存在。
Netflix・Slack・Zoom・任天堂のオンラインサービスなど、私たちが普段使っている多くのサービスは、
AWSのサーバー上で動いています。
AWSは、世界中に複数のデータセンター(リージョン)を持ち、障害が発生しても他の拠点で動作を維持できるよう設計されています。
しかし、2025年10月20日に発生した障害は、その分散構造をも揺るがす大規模なものでした。
この障害により、日本を含む世界各国のインターネットサービスが一時停止。
SNSでは「フォートナイトに入れない」「Slackが落ちた」「Zoomがつながらない」といった声が相次ぎました。
AWSはインフラの中核にあるため、1つの障害が波及的に多くの企業や個人に影響を及ぼすことになります。
AWSは信頼性が高いことで知られていますが、完全に障害ゼロというわけではありません。
今回のトラブルは、**“クラウド時代の依存リスク”**を改めて浮き彫りにしました。
今回のAWS障害の発生概要(発生日時・影響範囲)
2025年10月20日午後5時ごろ(日本時間)から、AWSの一部サービスでアクセス不具合が発生しました。
主に影響を受けたのは、米国東部(us-east-1)リージョン。
この地域は世界的にも利用者が多く、AWS全体の“中枢リージョン”として知られています。
AWSの公式ステータスページでは、Lambda、EC2、S3などのコアサービスに障害が報告され、
一時的に84サービス中49サービスで機能制限または停止が確認されました。
(※ITmedia NEWS 2025年10月21日報告より)
影響範囲は世界中に及び、
-
オンラインゲーム「フォートナイト」
-
クリエイター支援サービス「Skeb」
-
ビジネスツール「Slack」「Zoom」
-
一部のeコマース・決済サイト
など、数十社のインフラが一時停止。
日本国内でも、金融系のAPIやECサイトで一時的な接続エラーが多発しました。
SNS上でも「AWS落ちてる?」という投稿が瞬時に拡散。
Yahoo!リアルタイム検索の調べでは、10月20日夕方から夜にかけて約1.9万件の関連投稿が記録され、
そのうち約89%が「不便」「困った」といったネガティブ感情を示す内容でした。
まさに、“世界中のインターネットが一瞬止まった日”とも言える規模の障害でした。
原因はネットワークロードバランサーのサブシステム不具合【ITmedia報告】
AWSは翌21日午前6時(日本時間)時点で障害の原因を特定。
公式発表によると、問題の原因はネットワークロードバランサー(NLB)関連のサブシステム不具合でした。
NLBとは、インターネット上のアクセスを複数のサーバーに分散させる仕組み。
これにより、トラフィックが集中してもサーバー全体の安定性を保てるようになっています。
しかし今回は、このNLBの制御系統に異常が発生し、
複数のリージョンで通信処理が滞り、サーバーの応答が停止。
AWSチームはすぐに影響範囲を隔離し、バックアップ系統へ切り替えを実施しました。
Lambda(サーバーレス実行環境)をはじめとする一部サービスは比較的早く回復したものの、
データベース関連(RDS、DynamoDBなど)は復旧までに長時間を要しました。
AWS側は「再発防止のため、NLBサブシステムの構成を再設計中」とコメント。
この障害を受け、クラウド運用者の間では「可用性の冗長設計」が再び注目されています。
一部企業では、他クラウド(AzureやGCP)とのマルチクラウド戦略に切り替える動きも加速しそうです。
被害を受けた主なサービス(任天堂・Zoom・Slack・フォートナイトなど)
AWSの障害は、私たちの日常生活に直結する多くのサービスに影響を与えました。
特に顕著だったのが、ゲーム・エンタメ・ビジネスツール分野です。
サービス名 | 内容 | 影響状況 |
---|---|---|
フォートナイト(Epic Games) | 世界的オンラインバトルゲーム | ログイン・マッチメイキングが停止 |
Skeb | クリエイター依頼サービス | 一時的にサイトがダウン |
Zoom・Slack | ビジネス向けツール | 通話・チャットに断続的障害 |
任天堂オンライン | Switchのマルチプレイ機能 | 一部タイトルで接続エラー |
各種ECサイト・金融API | サーバー通信処理 | 決済・在庫連携に遅延発生 |
企業によってはAWSに完全依存しているケースも多く、
「クラウドの一極集中リスク」が改めて議論を呼びました。
とくにゲーム業界では、フォートナイトや任天堂など大手が相次いで影響を受けたことで、
SNSでは「AWS止まる=世界中のゲームが止まる」といった声も上がりました。
まさにAWSの存在が“インターネットの生命線”であることを再認識させる出来事となりました。
企業やユーザーが取るべき今後の対策と可用性向上のポイント
今回の障害を受けて、AWSユーザーや企業が意識すべきポイントは3つあります。
① 可用性設計の見直し
→ 重要システムは「複数リージョン」または「マルチクラウド(AWS+GCPなど)」での運用を検討すべき。
② 監視・通知体制の強化
→ AWSのステータスページだけでなく、独自モニタリング(CloudWatchやDatadogなど)を導入し、
障害発生を即時に検知できる体制を整えること。
③ ユーザーへの情報共有スピード
→ 障害時に「何が起きているか」を早く知らせることが、信頼維持に直結。
SNSでの公式発信を怠ると、ユーザーの不満が拡散しやすい。
また、エンドユーザー側としては、クラウド障害が起きた際に「焦らず待つ」ことも大切です。
多くの場合、AWSチームは迅速に復旧作業を行っており、長時間ダウンするケースは稀です。
ただし、業務利用者は**バックアップルート(ローカル環境など)**を確保しておくことを推奨します。
クラウドの恩恵を最大限に受けるには、便利さの裏にある“リスクと備え”を理解することが鍵です。
まとめ:AWS障害が教える「便利の裏にあるリスク」
AWSは世界中で信頼されるクラウド基盤であり、今回の障害も一時的なものでした。
しかし、「一部の仕組みが止まるだけで世界中が混乱する」という現実は、
クラウド社会の脆弱性を再確認させる出来事でした。
今後、クラウド業界では「分散化と多重化」がますます重要になります。
AWSのような巨大サービスであっても、常に改善とアップデートを続ける姿勢が求められます。
そしてユーザー側も、“便利さに依存しすぎない設計”を考えること。
それこそが、次の障害に備える一番のリスクヘッジです。